上室性期外収縮と心室性期外収縮
期外収縮とは正常な心拍(洞調律)が起こる前に出現する起源の異なる早期の心拍のことで、上室性期外収縮と心室性期外収縮があります。いずれも正常心拍に近いところで出現した場合は心臓が十分に収縮できず脈拍としてうまく感じ取れないということが起こります。したがって自覚症状としては「脈が飛ぶ」「脈が抜ける」「一瞬ドクンとする」などと表現されることが多くなります。上室性期外収縮は心房から発生する異常な電気信号、心室性期外収縮は文字通り心室から発生する電気信号です。研修医時代、上級医からは上室性期外収縮は安全、心室性期外収縮は危険性が高いことがあるので注意が必要と教えられましたが、それは本当だったのでしょうか。まず上室性期外収縮ですが、期外収縮が連発性であっても、動悸の自覚症状があっても、期外収縮のみで留まっている場合は、不整脈としての危険性はありません。しかしながら、上室性期外収縮は心房細動のきっかけとなる不整脈であり、心房細動を合併している場合は決して無視できない不整脈となります。上室性期外収縮は高齢者ほど増加する不整脈ではありますが、若年者に認められる場合は将来的に心房細動が発生しないか定期的に経過を観察しなければなりません。一方で心室性期外収縮は健康診断でも精査を要する不整脈として評価されることが多いのですが、その90%は治療の必要性がありません。もちろん10%は不整脈としてのリスクも高くきちんと治療する必要があり軽視してはいけませんが、不要な治療を受けている方も少なくありません。上室性と心室性、単に発生起源だけで治療を要する不整脈と治療不要な不整脈の鑑別はできないのです。
菊名やまゆりクリニック